共犯者と運命共同体

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 直哉は意を決して、男性の身体を持ち上げて自分の車のトランクの中に放り込んだ。扉のふちに引っかかった男性の足を強引に押し込んでトランクの扉を閉める。とりあえず、男性の身体はここに置いておいて後で処理は後で考えることにしよう。  そして、車の中からテッシュを取り出しボンネットに付着した血を綺麗に拭き取った。とにかく今一番大事なのは、何事もなかったように日々の生活に戻ることだ。  問題はこのアスファルトの道路に流れた血だ。こんな量の血を見られたら、死体がなくても近隣住民に通報されかねない。どうにかしてこの血を処理しなくてはいけないのだが、流せる水もなければ、綺麗に拭き取る雑巾なども持ち合わせていない。雨でも降ってくれないかと、空を見上げたが、目に映ったのは山間から顔を出し始めた日の出だけだった。  いいアイデアが出ないまま時間だけが過ぎていき、結局直哉がとった行動はゴミ置き場の位置を変えることだった。男性の血の多くは道路の端の方に流れていたため、ゴミ置き場の看板と、カラス除けのネットにそれを抑える重石を血の上に被せることで、一見何もないように見せることができた。  正直、不自然極まりないが、今はこれしかできそうにもない。血が見えないだけ良しとすることにしよう。とにかく直哉は一刻も早くこの場所から離れたかった。さっきから、誰かに見られていないか気が気でないのだ。  仕事の昼休みにまたここにきてどうにかすればいい。そう自分に言い聞かせて車に乗り込み、直哉はそっとアクセルを踏み込んで現場を後にした。そうしてやっと、自分がひどく喉が渇いていることに気がついた。
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