共犯者と運命共同体

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 予想外の事が起こったのは昼休みに入って、一目散に事故現場に戻った時だった。血を洗い流せる用具を購入して誰もいないことを確認してから、カラス除けのネットをどける。  すると、べっとりとアスファルトに付着していたはずの血が綺麗さっぱりなくなっていたのだ。  直哉は自分がひどい悪夢を見ていることを期待して、車に戻りトランクの中を確認したが、やはりトランクの中では一人の人間が死に続けていた。これは現実なのだ。じゃあ、あの赤黒い男性の血はどこにいってしまったのだろうか。  そんなの決まっている。誰かがあの血の存在に気づいてその汚れを落としたのだ。その人物はあれだけの血を見てなんとも思わなかったのだろうか。ゴミ置き場の位置を移動して、その血が隠してあることに事件性を感じなかったのだろうか。  その謎は解けないままに、一人の死体だけを残して時間は過ぎていった。
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