共犯者と運命共同体

1/10
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 直哉が気を取り戻したのは、ドスンという鈍い衝撃音が響き渡った何秒か後だった。一瞬見えたのは倒れこむように飛び出してきた大きな物体だ。何が起こったのか理解できないまま運転席のドアを開けて外に出ると、数メートル先にフードを被った人の身体が横たわっているのが見える。体格からしてどうやら男性のようだ。直哉は自分の体からだんだん血の気が引いていくのを感じた。  そうしてようやく、たった今自分が人を撥ねてしまったという事実を理解した。 「大丈夫ですか!? 僕の声が聞こえますか。聞こえたら返事をしてください!」  直哉は男性に駆け寄って大きな声で質問を投げかけたが男性からの返事はない。男性の顔を確認するために頭に被ったフードを取ると、40代後半くらいの男が薄く目を開いてこと切れたような表情を浮かべ、頭から大量に血を流していた。直哉に医学的知識はないが、今目の前にいる人間が流している血の量が尋常ではないことは門外漢の僕にでも分かってしまった。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!