第一話「妖」

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第一話「妖」

月明かりが照らしている常闇、、、虫の音が辺り一面に響き渡る夜の道に一人の男がひっそりと歩いていた。 その男は生気が感じられないほどの無表情、、、色素を失った白髪、、、服は髪の色とは違い、全身を漆黒で統一させており、周りの闇に溶け込んでいるようだった。男は腰に刀を差しており、その刀もまた漆黒の色に染められている。 「...」 男は月明かりが照らしている夜道を歩き続けている。歩いているだけだがその姿は明らかに異様な雰囲気を放っていた__ __しばらくして男はどこか虚しい目をして、歩みを止めた。 「グルルルル」 …その存在はあまりにも現実的ではない、しかしそのリアルな風格が、気配が、その存在が現実であると嫌でも訴えかけている。 __妖怪、、、それは人間の理解を遙かに超えた奇怪で異常、異質な存在__その存在が男の目の前に現れた。 その風貌は動物で言うと狼に酷似している存在であった。しかし、影か、靄のようなものを纏っており、腹部からは剥き出しの肋骨……見る限り、その存在が普通の狼ではないことは確かだ。 「グルルル...ガァァァ!!!」 その妖怪は勢い良く助走をつけて男に向かって飛びかかってきた。普通、、、人間ならこの様な異質な存在を目の前にしたら腰が抜けて怖じ気づきそのまま目の前の妖怪に喰われるだろう。 “普通の人間”なら... 「?」 一瞬..ほんの瞬き一つの間に、飛びかかった相手が自身の後ろに移動していたことに、獣の妖怪は困惑を隠しきれない様子だった。 妖怪の目に映っている男は、いつの間にか抜いていた刀をしまっている最中だった。獲物を貪り食うしか能が無いこの妖怪でも頭の中に一瞬疑問が生まれたが...すぐさま目の前の獲物を喰らい尽くすことしか考えられなくなった。そして実行しようと足に力を入れようとした___ ズシャ___ 何かが崩れ落ちる音と共に妖怪の視界が揺れた。確認しようとしても足に力が入らない...いや、獣特有の四足の足が無くなっていたのだ、、、。 なぜ、どうして、いつ、どうやって...そのような考えをする暇もなく四肢が斬られて無様な姿を晒している獣の妖怪の近くに男が近寄る。 その男は相も変わらず虚しい目をし、妖怪を見下ろして、一言... 「......眠れ」 そう言い放ち、刀に手をかけたと思いきや、紅い鮮血を撒き散らし…妖怪の首は宙を舞った。 ある一人の男が立っていた。彼の足下には先程自身が殺めたばかりの妖怪が、、、“妖怪であったもの”が転がっている。刀には、その妖怪の血であろうと思われる液体が付着してある。その液体を払うかのように刀を振り、しまう。瞬間払った液体がまるで生き物のように地面を這い、一カ所に集まり、宝石のような形に変化した。それは薄い灰色をしていた。ひょいと拾い上げて男は何事もなかったかのようにまた夜道を歩き始めた。 彼の名前は雨宮時雨 この残酷な世界を救う組織 ____妖怪退治屋
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