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第二話「出発」
5月9日午前9時40分……昨夜退治した妖怪を報告するべく、本部へと向かう。本部にいる仲間に急かされたため、妖魔石を握りしめ若干早めに移動することにした。
「あ!あまみやっちだ!遅~いよ!」
「すまない。小豆。ちょっと夜遅くまで……自主見回りをしていたから……寝不足でな」
「何?言い訳~?そんなんじゃモテないわよこの根暗男」
「ほーん……はいはい」
「何よ!その気怠げな返事!」
この馴れ馴れしくちょっとうざい女は俺と同期の茜 小豆。専門高等学校にいた頃には上位の成績者で、最前線で戦っているのをよく見かける。
「おはよう!雨宮!」
「嗚呼……おはよう……亮。今日も元気だな」
「まぁな!寝不足だって言ってたが大丈夫か?」
「嗚呼……生活には支障は無いから大丈夫だ」
「そうか、でも無理はするなよ!」
「了解」
一方こっちの小豆とは正反対の元気で明るい男は茜と同様俺の同期の龍宮寺 亮。
いつも明るく組織を支えてくれる存在である。高等学校の成績は小豆の次ぐらいに優秀だった男だ。ちなみに俺の成績は僅差で小豆に勝っていた。
ふと疑問に思った俺は周りを見渡すと他二人の姿が見当たらない。
「……他の奴らは?」
「なんか沖縄に長期出張らしいわよ」
「沖縄か!大変だなあいつらも!」
「確かに……遠いしな」
そう言いながら時計に目を向けると、既に9時56分……10時まで後5分をきってしまった。
「そろそろ10時にはなるから……席に戻る」
「りょーかいー」
「おう!」
俺がそう言うと、二人もすぐさま自身の机に向かい、報告書や武器の手入れ等をしはじめていた。
それらを見届け、俺も自分の席につき、昨日退治した妖怪の報告書を書きはじめた。
すると数分も立たないうちに部屋のドアが開かれ、一人の男性が現れた。そう、彼こそ茨城県妖怪退治屋本部長の青柳 勇斗。彼が現れた瞬間、皆一斉に立ち上がり敬礼のポーズを取った。
「嗚呼、みんなありがとう。もうやめてもらっても構わないよ」
そう青柳本部長が呼びかけたら、一斉に敬礼を解いた。
「うん、今日も皆元気が良くてよろしいね。報告書等は私の机に出しといてくれ。それじゃ今日も1日よろしくね」
「「「はい!」」」
「じゃあ、早速妖怪共の報告が出た地域を教える。いずれの地域も報告が出てきて時間はあまり経っていないためまだ周辺にいるだろう。茨城県M市の町には小豆くん。その市駅には亮くん。茨城県H市の町には雨宮くんが出向いてくれ。退治した後は報告を兼ねて本部に連絡をするように。それでは、皆健闘を祈る」
朝礼の後、報告書を出し終えた俺達はすぐさま指定された位置に向かうべく準備を進めた。
妖怪と戦うために必要不可欠な武器、退治した後本部に連絡する用のスマホ、逃げて姿をくらました妖怪を探し出すための妖気探知機。それらを持ち、皆一斉に外に出る。
目的地までは本部から支給された黒色のワゴン車で向かう。この車の中にはもし上級妖怪に対峙した場合に戦えるよう、様々な武器や非常食などを詰め込んでいる。
自身の車に乗る寸前に俺は小豆と亮に話しかけた。
「そういえば……二人の目的地、近くだったよな?」
「ええ、そうね。私が亮を乗せて運転して途中、駅で降ろしてから私の目的地に向かうわ」
「助かるぞ!茜!」
「えぇ、もっと感謝して頂戴」
「……」
「そ、そういえばあまみやっちの所は被害が多いんでしょ?気をつけなさいよ!」
確かに二人の向かうところの被害情報は2,3程度だったか俺の行くところは6,7超えらしい。幸い死者の報告はないようだ。
「嗚呼……相当すばしっこい妖怪なのかもしれないからな」
「どんな相手だろうと雨宮なら大丈夫だろう!」
そう言い、亮は大きく笑った。
「はいはい……じゃあ行くわ」
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