第三話「被害者と加害者」

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第三話「被害者と加害者」

目的地のH市にワゴン車で向かいながら俺は通報内容を思い出す。 (被害者7人のうち、子供が2人、女性1人、男性4人……死人は出ていないが被害が甚大だ。被害者に関係性が無いから、無差別攻撃だと思うが、、、気性が荒い妖怪の仕業か?) そんなことを考えていたら、目的地周辺の町にたどり着いた。道端に車を停め、降りる。辺り一面、田んぼが広がっており空気が綺麗だ。 一息ついてから、妖怪を探すべく妖怪探知機に手をかけようとして__止めた。 約2㎞離れてる田んぼと田んぼの間の道周に、、、「ソレ」はいた。 のどかな景色の中に似合わない異質なソレは……植物に例えるなら食虫植物のウツボカズラのような筒状で赤く、、、蓋の役割をしているであろう部分には、大きな口があるのが見える。 植物妖怪から、少し離れた所に、人がチラホラいるのが見えた。近づいて、声をかける 「妖怪退治屋の雨宮時雨です」 俺の姿を見るなり、ホッとしたような顔を浮かべた。 頭に包帯が巻かれている……あの植物妖怪にやられたのだろうか。 「早速ですが、、、被害状況について教えて貰ってもよろしいでしょうか?」 「俺の子供二人が襲われちまって……叫び声を聞いた妻が子供たちに駆け寄ったんだが、毒気にやられたのか、気を失ってしまってな。俺は、街の男衆達と協力して、子供たちと妻を避難させ単たんだが、まだ……目覚めない」 目の前の男性は小刻みに震えだした。 女子供はまだしも、大の大人でさえも恐怖を覚える。それほど、禍々しき存在。 もう二度と目の前にいる男性達やその家族のような被害者を生まないためにも、退治しなければならないのだ。 「わたしに任せてください」 男性はコクリと頷くと、子供と奥さんのもとへ、おぼつかない足取りで向かって行った。 いったん、妖怪が出現している近くから少し離れた所に車を移動させ、何時でも必要な武器等を取り出せる様にし、じっくりと妖怪や辺りを観察することにした。 妖怪がいる田んぼ道の奥には山がある。この妖怪がいる限り、向こう側には行けないだろう。また妖怪自身の辺りには植物の葉が付いている触手が5本ある。 おそらく、獲物の捕食方法はウツボカズラと同じものだろう。それか、仕留め損なった獲物をあの植物の触手で掴み取り捕虫袋に入れるのやもしれない。捕虫袋に入れた獲物が逃げ出さないように蓋を閉じて出れないように溶液で溶かして、喰らうのだろう。 どういった武器で戦った方がより効率よく退治できるのか考えていた時、田んぼ道の奥にある草花がガサガサと揺れているのが目に見えた。 しばらくの間、警戒して目を凝らしていると、何かがその草花を掻き分けて、飛び出してきた。 、、、猪__それも大人サイズ。山道からこちらの田んぼ道に向かってきた。妖怪も危険だが、野生動物も危険な存在である。 猪は妖怪に近づいた。妖怪よりもまずこの猪を捕まえるべきか__考えた瞬間、、、それは起こった。 「______キィィィ!!!!!!」 「ッ!!!!」 __それに前触れなどは無かった、、、突如として植物妖怪の蓋の部分の上にある口が、奇声を上げたのだ。 瞬時に刀の妖魔武具である侃放縦(かんだら)に手をかけ、戦闘態勢に入る。 (何だ?! ……妖怪からは距離を取っていたはずなのにこの声音! ……今まで落ち着いていたはずだったのに! 猪に警戒しているのか!?) 少しでも情報を得ようと妖怪の周辺に目を凝らす。すると猪が狂ったように暴れていた。まるで苦しさから身を守るように、少しでもその場所に痛みを感じないように、体中を地面にぶつけていた。 ほんの数秒の間それが続いたが、急にピタリと猪が動きを止めた。しかし、妖怪の奇声は鳴りやまない。 何かが起こる。 そう直感し、猪と妖怪を交互に見た。 すると、猪の頭部が__紅い鮮血と脳の一部を撒き散らしながら破裂したのであった。
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