87人が本棚に入れています
本棚に追加
仕事を終えて着替えていると、ロッカー室にママが入って来た。
「森辺くん、ちょっといい?」
「あ、はい」
ママは、少し残念そうに、けれど「貴方にとっていい話だから」と藤堂物産の社長が龍二を雇いたがっている話をした。
「ま、うちも用心棒が欲しかったんだけど…。向こうも運転手件ボディガードが欲しいみたい。悔しいけど、うちの給料の倍は出るみたいだから」
と苦笑した。
「そうなんですか?」
龍二は、少し考えさせてください、とその話を持ち帰る。
結局のところ、金が欲しい。
雇ってくれた松浪には感謝している。
けれど、藤堂物産のお抱え運転手として雇って貰うほうが、先々安心なことは間違い無いだろう。
(安心か…)
自分で考えておいて、おかしくなる。
こんな安心からほど遠い自分がこんな風に考えるなんて。
少し悩んだけれど、こういうことは
先延ばしにすると、相手に迷惑がかかる。
松浪にしても早く新しい人を雇いたいだろう。
決心して、龍二は藤堂に世話になる事にした。
最初のコメントを投稿しよう!