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校則、変えてみませんか
キーンコーンカーンコーン……
最後の授業の終わりを告げる音が鳴り、同級生たちはそれぞれ教室から楽しそうに出ていった。
安斉美津は、図書室に返す本をカバンにしまい、教室を出ようとしたところで先生に声を掛けられた。
「安斉。悪いんだけど、この資料、資料室に戻しておいてくれるか」
可愛い子にはいい先生を演じるが、美津のような地味な生徒には横柄な態度を取る担任には嫌悪感を覚える。
「……はい」
しかし、嫌だと言うことも出来ず、美津はかごに閉まってある資料を両手に持ち、教室を出た。
「美津!」
廊下を歩いていると、前から声がし、顔を上げた。
「なにしてんの」
佐多結は、美津のかごを前から半分持ち上げた。
「資料室に置きにいく」
結はむっとした顔をして、そのまま半分持ったまま、一緒に歩き始める。
「いいよ。一人で行ける」
美津がそう言うと、結は立ち止まる。
「こんな重いもの普通さ、女子生徒に頼む?またあいつでしょ。あとで文句言ってやる」
結が苛立ちを表すと、美津は慌てて首をふる。
「大丈夫!そんなことしないで」
「……どうしてよ?」
不思議そうに言う結を美津はバツの悪そうな顔で見る。
結は、中学に入ってから、明らかに自分とは違う”部類”になっていた。
髪はほのかに茶色で、スカートも短く、メイクもしっかりするようになり、友達も派手な雰囲気の子とつるむことが多くなっていた。
それに比べて、美津はおしゃれの仕方もわからなく、髪型も三編みのままで、スカートも校則通りの長いままで、その上、極度の人見知りで、友達を作るタイミングを見失い、気付いたらクラスに気心知れた人はいないままだった。
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