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それが、俺の公然の秘密と言われている部分であった。某ロングヒットしているアニメのキャラと、俺は瓜二つなのだ。それも、その筈で、そのキャラのモデルは俺であった。
「…………本当に、あんなキャラの人間が存在しているのか……人形みたいだ」
「フィギアが生きている」
そして、それは偶然でも何でもなく、俺の双子の兄は漫画家なのだ。連載当初は、売れていなかったのでモデルが雇えず、俺を描いたというだけだ。
「高校生?学校に行っていなくてもいいのか?」
「ここでバイトか?」
そして、俺は童顔で、よく学生に間違えられる。だから兄が描いたキャラのままで、時間が止まってしまっているとも言われている。
「あ、嵯峨さんのお兄さんは……」
「言うな」
その後、兄の世分(せぶん)の書いた漫画が徐々に売れ出し、アニメ化された。俺と兄は二卵性の双子であったので、姿が似ていなかった。だから、バレないと思って就職したが、皆はすぐに気付いた。それは、俺の姿が、キャラに激似であったせいだ。
「だから、会社もクビに出来なかったのですか……他の出版社に、この生きたフィギュアを持ってゆかれたくないですからね」
「フィギュアと言うな。それに、私がいつ、そんな活動をした?」
でも、それも理由にあるだろう、つまりは、俺と世分は兄弟で、俺が転職すれば、世分も移籍する可能性が高い。
「しかし、本当に生きているの?まんまキャラで驚く!」
「あ、写真を撮ろう!」
ランチの時間が終わっても、客は暫く帰らなかった。
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