第二章 タイムカプセル 氷

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 それは凄い事ではなく、俺の脳の造りに起因している。俺は文字の暗記が得意ではなく、全て画像暗記なのだ。それで容量がすぐに一杯になってしまうので、他の記憶媒体として、宝生ともう一人を利用していた。感情の記憶などは宝生に任せ、俺は出来る記憶だけをしてゆけばいい。  そして画像記憶を、部分拡大して確認する事も可能であった。更に、俺は美大出身であるので、自分で再現して描く事も可能だった。 「あ、言い忘れた」  又、電話を掛けたら、宝生に殴られそうなので、ラインで赤のエンディングノートはインターネットで公開されていると伝えておいた。 「それで、赤のエンディングノートには…………」 「場所を移動する」   現場の確認と、写真を撮影できたので、この場に残る必要はない。俺は隠れて移動すると、タクシーを捜した。 「画像は本社に送信しておこう。元同僚がいるハズ」 「自分の特ダネにしないのですか?」  地方から発信しても、特ダネには出来ないだろう。一秒を争うニュースは、本社に任せた方がいい。  俺はタクシーを見つけると乗り込み、元同僚の朝比奈に画像と、赤のエンディングノートの存在、そして三原田と神部という人物が殺されていた可能性を示唆しておいた。 「でもな、インターネットで出回っている赤のエンディングノートも本物ではない。それでも、先にノートがあったのだと示せればいい」  赤のエンディングノートを、インターネットの公開データで見てみたが、本物に近いが完全ではなかった。それは意図して、それらしい複製を作ったものと考えられる。 「それらしい複製?」 「本物の赤のエンディングノートは…………元となる絵は、凄く上手い。でもな、着色が下手かな…………これは、別の人物が着色したのかな…………でも、色の方はドラマティックで激情的で、より感情を表現しているのかもしれない」
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