第二章 タイムカプセル 氷

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「それは理由が二つあって、一つは俺の両親がその時期に離婚した事。そして二つ目は、その後に俺達を引き取った母親が事故死して、引っ越しした事だ。だから、俺の出身はその中学ではないし、嵯峨という生徒もいなかった」  しかし、西川は俺達に宛てた手紙を残していたので、タイムカプセルの有志にどうかと声を掛けられた。 「では、本当に…………嵯峨さんは関係者なのですね…………」  関係者なのか分からないが、赤のエンディングノートの前から、事件は始まっていたような感じがしていた。でも、関わらないように避けるしか無かった。 「…………俺達が赤のエンディングノートを入れた殺人鬼という説もあってさ…………あんまり、近付きたくなかったけどな」  その説には、信憑性もある。  まず下絵の上手さだ。自分で言うのも変だが、俺は完璧に模倣出来る。でも、それは、模倣ではなく、作者だからだと言われていた。誰かが、俺がどこかで説明に描いた絵を入手して、比較したらしい。  そして、もう一つの理由は、俺の双子の兄、世分の色使いに、とても似ていた。劇的で感情移入する色は、世分の作風にも出ている。 「それで、今回の死体は何と書かれていたのですか?」 「愛を知らない人々という題名で、抱き合って凍っていた」  抱き合ってというのも、少し嘘で、本当は愛し合った状態で凍っている。  しかし、実際の三原田は、あまりいい教師とは言えず、好き嫌いで生徒を判別する癖があった。だから、一部の生徒からは、異常に嫌われていた。  そして、その異常に嫌っていた生徒の中に、神部もいた。  更に神部の今を確認してみると、七年近く前に失踪していた。三原田も同様に、かなり前に失踪してしまっていた。
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