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第一章 タイムカプセル 花
とある政治家の不正を記事にしようとしたところ、圧力を掛けられ、地方に飛ばされてしまった。
「それで、嵯峨さん、こんな辺鄙な場所に来てしまったのですか?」
「え?ここ。辺鄙か?」
確かに都心から離れているが、充分に出勤圏内で、離島とかに飛ばされなくて良かったと思ったくらいだ。
「辺鄙ですよ……近くには、何も事件がありません」
事件があるから都会とは言えないだろう。それに、ここにも事件があった。
「明智、もしかして、事件が好きで出版社に勤めたのか?」
「そうです!」
事件好きで、出版社に勤めた奴は初めて見た。でもここは、地方誌で事件の記事などやっていない。
「事件!」
「仕事しような」
俺は、嵯峨 瑛人(さが えいと)、何故、ここが辺鄙なのか不思議に思ったのかと言えば、昔、住んでいた土地だったからだ。
「仕事と言えば、広告を載せてくださいと、ひたすら店を回るくらいで…………任されているのも、地方のフリー誌」
「意外と重要だぞ」
それに、俺の方には記事にまとめろと書かれた、ぶ厚い封筒が届いていた。これを記事にしても、本社に戻れるとは思わないが、サラリーマンは言われた仕事をこなすしかない。
「嵯峨さんは、凄いですよ…………本社でも、あれこれ凄い記事を担当していたし……」
しかし、俺は美大の出身で、本職は広告のデザインなのだ。だから、どちらかというと、今の方が合っている。それに、インターネットの映像広告が専門でもあったので、田舎には適任かもしれない。
映像広告は、地方こそ必要なのだ。
「凄くないよ……使い走りだった」
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