第二章 タイムカプセル 氷

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「…………今度は夢明も一緒の所が見たいな。それか、千鶴が一緒の時もいいな……」  千鶴は俺の妹で、俺と双子のようだと言われていた。俺と本当の双子は世分だが、千鶴の方が俺と似ている。 「千鶴もいいな……」 「手を出さないでくださいね。樫山に怒られます」  千鶴は医者と結婚していた。 「そうだな。見つからない様にするよ」  築茂は、俺が言ったくらいで行動を変えるような奴ではない。それに、この部屋を借りたのは、別の意味がある。  それは、本当の意味で、俺と話せる場が欲しかったのだろう。 「警官を手配したのは、別の意味がある。俺も、嵯峨を見張っている必要が出来た」 「五十嵐代議士に何かあったのですね?」  五十嵐というのは、俺がここに飛ばされてきた理由であった。裏献金を貰っている証拠を掴み、更に企業と癒着し、利益を得ていた。土地の買収にも絡み、あちこちで不正をしている。  俺が五十嵐の事を確認しようとすると、築茂が首を振った。 「まだ情報は流出していない。だが、党から緊急の呼び出しを受けた。相談したい事があるらしい」  呼び出しを受けていなければ、和泉をもっと抱き、朝まで過ごす気でいたらしい。 「まあ、俺の持っている情報は、今回の件とは関係ないのでしょう。でも、それを理由に自殺したと、世間に思わせてもいいですよ」 「………………見た目と違って、本当に怖い奴だよな。どこまで知っているのか……まあ、その通りだ。俺が連絡したら、持っている情報を全部公開していい」
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