第三章 タイムカプセル 光

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 この家を右と左で分けると、左の一階には世分のアトリエというのか、仕事場がある。漫画家である世分は、この家で仕事をしていた。 「分かったよ、手伝うから……着替えてくる」  そして、左の二階部分に子供部屋と、俺の小さな書斎、主寝室がある。  俺が二階に上ってゆくと、二軒の間にある中庭で、猫と子供達が遊んでいた。  右側には先程電話でやりとりしていた、宝生家族が住んでいて、一階部分のリビングを共有して生活している。  これは、俺達の秘密の一つだ。何故、宝生がここで暮らしているのかと言えば、世分の恋人なのだ。  だが、家族と恋人、子供も同居しているなどとは言えず、周囲には二世帯とその兄という構図にしている。  幼少期に問題の多かった俺達は、それぞれの夢を叶える為に、この生活を選んだ。ちなみに、妻たちが認めているのかと言えば、妻たちにも理由があるのだ。  俺の妻、夢明。宝生の妻、日菜子。そしてもう一人、樫山の妻であり俺の妹の千鶴。その三人は、本人達曰く、恋人というよりも愛人で家族なのだと言っている。どういう関係なのか、千鶴は夢見がちに語ってくれたが、よく分からない。だが、精神的にも強い繋がりを持っていて、更に一緒に生きると誓っているらしい。  ちなみに、宝生の妻の日菜子は、樫山の妹であった。  この複雑な人間関係で、俺達は小さな世界を作り、その世界を秘密にしていた。  そして、俺の恋人は樫山で、今も継続した関係になっている。 「世分、着替えてきた」 「ありがとう!スタッフは帰しておいたから」  そして、ここには、まだ秘密がある。
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