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「…………ごめん、もう言わないから…………泣くな。瑛人が泣いていると、心が締め付けられて、とても苦しい。倒れそうだ……… …」
世分は、本当にふらついていて、今にも倒れそうになっていた。そこで、俺は肩を貸して歩き、横にある寝室まで運んだ。
そして世分をベッドに横たえると、足元に座った。
「瑛人、もっとこっちに来て」
「俺は、絵を仕上げておくよ」
しかし、世分が手を伸ばしてきたので、枕元まで歩いてしまった。
「なあ、世分。俺が追いかけていた政治家、五十嵐は自殺したみたいだ…………」
情報は何も無いが、多分、自殺したのだろう。
「そうだな…………五十嵐は、少年愛好家だった。それをスクープされてしまった。その子は、成人していると嘘をついていて、本当は未成年だった。しかも、あれこれ告発すると脅した」
「…………うん。まあ、そうだろうな」
それは、俺も五十嵐に口説かれたのでよく知っていた。俺の姿は十代にも見えるので、五十嵐の好みだったのだろう。俺達は、それを知っていたので、ハニートラップで内部事情や、画像、そしてデータも入手した。でも俺は、肉体関係を躱して逃げた。
「瑛人の情報は、本社に渡していい。その内容は、本社の永久保編集長の名前で世の中に公開される」
永久保は大スクープを得た事で、部長に昇格する。そして、永久保の名前は日本中に知れ渡り、テレビにも出演する。
「瑛人が危険な目に遭うのは困る。だから、それでいい。永久保は、少年の父親に刺されて死ぬ」
「…………そうなるのか」
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