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俺は書類を封筒から出そうと、机を捜した。しかし、使える状態の机が無い。
駅前ビルの五階、駅も小さいが、オフィスも小さい。その小さい部屋に、雑誌などが山積みになっているので、余計に部屋が小さく感じる。かろうじて、応接室は綺麗になっているが、机の周辺は足の踏み場もない状態だ。
「ゴミを捨ててくるか…………」
居場所を確保する為に、ゴミを纏めていると、この出張所の責任者、和泉がやって来て、窓を開けるとタバコを吸い始めた。
「和泉編集長、ここは禁煙ですよ!」
「誰が決めた?」
この建物が、禁煙なのだ。
「それでさ、嵯峨、本社から記事にしろと、封筒が届いていたよな?」
「これですか?」
俺が和泉に封筒を渡すと、和泉が中の書類を見て、嫌な顔をしていた。
「やっと忘れた過去を、ほじくり返せという事か…………もう、十年が経過するだろう?」
「そうですね……もう十年…………」
この土地で、昔、事故が発生した。
だが、事故と認めない人物が多く、未解決事件だと称されている。それは、警察の捜査不足を指摘するもので、あまり記事にしたくなかった。
「身内だけで、十三回忌をするのか?」
「そうですね。決めていませんが、そうなりそうです」
俺が指名されたのには理由がある。それは、公然の秘密にも近い。その秘密は、和泉にもあり、俺がここに飛ばされた理由でもあった。
「編集長、どうして嵯峨さんに聞くのですか?」
「被害者の…………身内だからだよ」
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