第三章 タイムカプセル 光

8/11
前へ
/151ページ
次へ
「アスミが夢明だったとは、今更、言えないよな…………」  スカウトされたのは、公園で踊っていた夢明であった。しかし、夢明はアイドルに興味が無かった。だが、明日美はアイドルになる事が夢だった。  だから、スカウトされたのは明日美という事にしたのだ。しかし、デビューが決まり、雑誌の取材が決まっていたのに、明日美は階段から落ちて足の骨を折った。しかも、複雑骨折で、手術とリハビリに期間を要した。  このチャンスを逃したら、もう次は無いと、悲観した明日美を見て、夢明が代理でアスミを演じ始めたのだ。そして、大ヒットしてしまった。  夢明は、再び明日美にチェンジする為に、仕事量を減らし、期間を開けた。そして、コンサートで入れ替わったのに、そこで明日美は死んでしまった。 「…………嘘つきの死か…………」  明日美の日記には、足を骨折した事や、入院生活での日々が綴られていたのだ。それを、誰かに知られるわけにはいかなかった。  アスミは、夢明ではなく、明日美なのだ。  しかし、夢明と比較すると、明日美は似た容姿なのに地味で、輝きが無かった。夢明は動きにキレがあり、見せ場も作る。ただ座っているだけでも、夢明の周辺は輝いて見えた。だから、入れ替わっても、明日美はアイドルとして活動するのが難しかったかもしれない。 「明日美は手が器用で、折り紙とかすると、完璧だった。手芸も凄くて、そっちに進めば良かったのに…………」 「…………今更だな」  結果を知っているので、そう思ってしまうだけだ。結果を知らなかったのならば、夢に向かって進む事の意義を言っていただろう。 「それで、凍っていたのは誰だった?」 「捜査上の秘密は言えません」  言えないとなると、推測が合っていたのだろう。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加