第三章 タイムカプセル 光

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「愛を知らない人々」  三原田も、生徒に手を出していたと噂されていた。このタイミングで、五十嵐の性愛の件を、他の事件で上書きしたのは、奇妙な偶然だ。 「被害者の親が怒る」  この場合の被害者は、神部になるのだろうか。  神部の実家は建設会社で、当時は割と裕福だった。今はどうかと検索してみると、神部の弟が一級設計士になり、家を継いでいた。設計から建築まで、そして修繕から改築もトータルに請け負う会社として、地元では有名な会社に成長していた。 「神部が継がなくて良かった?」 「まあね。神部はあんまり努力しない性格だったし。家を継ぐのを嫌がっていた」  神部は、地味に働く事を嫌っていた。 「彼女は、真面目ないい子が多かったのに……不思議だった」  これで、無理心中とかにされたら、神部も浮かばれないだろう。世間は、より多数を信じる傾向があるので、神部はゲイだったという事にされてしまう。い  しかし、実際は神部には彼女がいて、ちゃんと恋愛していた。その事実を知っている人が、少数派で、しかも声に出して叫べる術が無いのだ。 「ペンは銃よりも強いと言うだろう。報道とか、マイク、テレビもそうだよな」 「そうだな、それで、非難されると銃口を向けられているように怖い」  そういう意味の強いでは無かったのかもしれないが、正義として振りかざしたものは、凶器なのだと理解した方がいい。振り下ろされた側は、かなりの恐怖を感じる。そして、正当防衛として、相手を殺す可能性もある。 「あ、時間が無くなるから原稿を仕上げよう!」 「こんな時間か!!」
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