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「愛を知らない人々」
三原田も、生徒に手を出していたと噂されていた。このタイミングで、五十嵐の性愛の件を、他の事件で上書きしたのは、奇妙な偶然だ。
「被害者の親が怒る」
この場合の被害者は、神部になるのだろうか。
神部の実家は建設会社で、当時は割と裕福だった。今はどうかと検索してみると、神部の弟が一級設計士になり、家を継いでいた。設計から建築まで、そして修繕から改築もトータルに請け負う会社として、地元では有名な会社に成長していた。
「神部が継がなくて良かった?」
「まあね。神部はあんまり努力しない性格だったし。家を継ぐのを嫌がっていた」
神部は、地味に働く事を嫌っていた。
「彼女は、真面目ないい子が多かったのに……不思議だった」
これで、無理心中とかにされたら、神部も浮かばれないだろう。世間は、より多数を信じる傾向があるので、神部はゲイだったという事にされてしまう。い
しかし、実際は神部には彼女がいて、ちゃんと恋愛していた。その事実を知っている人が、少数派で、しかも声に出して叫べる術が無いのだ。
「ペンは銃よりも強いと言うだろう。報道とか、マイク、テレビもそうだよな」
「そうだな、それで、非難されると銃口を向けられているように怖い」
そういう意味の強いでは無かったのかもしれないが、正義として振りかざしたものは、凶器なのだと理解した方がいい。振り下ろされた側は、かなりの恐怖を感じる。そして、正当防衛として、相手を殺す可能性もある。
「あ、時間が無くなるから原稿を仕上げよう!」
「こんな時間か!!」
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