第三章 タイムカプセル 光

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 どうして俺達の方が、締め切りに泣かされなくてはならないのだろう。でも、世分を見ていると、何も言えなくなってしまうのだ。  世分は何度も倒れながらも、俺達の事ばかり案じている。更に世分は、常に自分よりも、俺達を優先してしまう。そして、見返りは微塵も考えずに、ただ愛してくれる。 「世分は、俺達の中心だから…………」 「うん。長生きさせないと…………」  だから、原稿は仕上げておこう。  タイムカプセルを埋めた時、俺は現場にいなかった。それは、引っ越してしまっていたので、来る事が出来なかったせいだ。 「西川は全員分の手紙を書いた」  その全員には、俺も含まれていた。 「でもさ、一年後にタイムカプセルを掘り返されてしまった時、西川は生きていたよな?手紙は、西川に戻ったのかな?」  西川の手紙は、掘り出され散らばった物の中には無かったらしい。 「だから、手紙は無くなっていた。あれ…………西川の葬式に行った記憶がない」  もしかして、西川は今も生きているのだろうか。 「西川の家に行ってみるか…………」  西川との記憶は曖昧で、顔もよく思い出せない。一緒に遊んだ記憶もないが、手紙には何が書かれていたのだろう。 「西川の実家は、夢明の実家の近くだったような…………」 「確か、古いアパートだったよ。社宅だったかな?実家に近い事は憶えている」  宝生が卒業アルバムを持っていたので、後で西川の住所をメモしておこう。
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