84人が本棚に入れています
本棚に追加
どうして俺達の方が、締め切りに泣かされなくてはならないのだろう。でも、世分を見ていると、何も言えなくなってしまうのだ。
世分は何度も倒れながらも、俺達の事ばかり案じている。更に世分は、常に自分よりも、俺達を優先してしまう。そして、見返りは微塵も考えずに、ただ愛してくれる。
「世分は、俺達の中心だから…………」
「うん。長生きさせないと…………」
だから、原稿は仕上げておこう。
タイムカプセルを埋めた時、俺は現場にいなかった。それは、引っ越してしまっていたので、来る事が出来なかったせいだ。
「西川は全員分の手紙を書いた」
その全員には、俺も含まれていた。
「でもさ、一年後にタイムカプセルを掘り返されてしまった時、西川は生きていたよな?手紙は、西川に戻ったのかな?」
西川の手紙は、掘り出され散らばった物の中には無かったらしい。
「だから、手紙は無くなっていた。あれ…………西川の葬式に行った記憶がない」
もしかして、西川は今も生きているのだろうか。
「西川の家に行ってみるか…………」
西川との記憶は曖昧で、顔もよく思い出せない。一緒に遊んだ記憶もないが、手紙には何が書かれていたのだろう。
「西川の実家は、夢明の実家の近くだったような…………」
「確か、古いアパートだったよ。社宅だったかな?実家に近い事は憶えている」
宝生が卒業アルバムを持っていたので、後で西川の住所をメモしておこう。
最初のコメントを投稿しよう!