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第四章 タイムカプセル 土
翌日、事務所に出勤すると、まだ和泉は来ていなかった。だが、和泉が重役出勤するのは、いつもの事なので、取材に行って来る旨を書いたメモを机の上に置いておいた。
「明智、一緒に行くのか?」
明智は出勤してきたが、ぼんやりとしていて、まだ眠っているようだった。そして、昨日と全く同じ服を着ているので、もしかしたら、家に帰っていないのかもしれない。築茂の家から、そのまま出勤しているのだろう。
「………………行きます………………」
俺に反応すると、明智は少しきつい目をした。しかし、立ち上がろうとして、腰を押さえた。
「イタタタ」
小さく呻いて椅子に座り直すと、今度はビクンと顔をあげて呻いていた。
「ウグ!」
多分、明智は初めてだったので、力を巧く抜く事が出来ず、切れ痔になってしまったのだろう。これは、座っている時も、地味に痛いが、排泄する時は更に恐怖だ。そして、治療しておかないと、何度も切れる。
「行くぞ」
「待ってください!!」
立ち上がった明智は、少し呻くと、やや内股で歩き始めた。
「俺は、車通勤に切り替えた。電車もいいけれど、ここは車がないと不便だ……」
「そうですか!」
昨日と変わって、明智はやや反抗的になっていた。それは、築茂の愛を得た今、和泉と同等になったと主張しているのかもしれない。
明智も、男という権力を得ると、変わるタイプだったと分かり、ややげんなりしてくる。和泉も、前はあんなに怠惰な人間では無かった。
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