第一章 タイムカプセル 花

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 桃色の線を辿ってゆくと、四車線の国道に出るが、その手前に小さな商店街がある。 「すごい車の量ですね」 「主に、トラックだな」  商店街は、社宅や寮、アパート群の外れにあった。そして社宅や寮も、くすんだ汚い色をしていて、古さを感じさせる。 「ここから、アイドル、カト アスミが生まれた」  この土地出身のアイドル、カト アスミは、本名も加登 明日美であった。 「実家は、加登理髪店。この商店街の入口にある店だ」  この加登理髪店は、今も明日美の両親が経営している。店内には、明日美の写真が飾られ、今も未解決事件マニアや、ファンが来訪していると聞く。 「小さな商店街?商店がありますか?」 「昔も、商店が無い商店街だった」  それでも、シャッター街ではなく、営業しているのには理由があり、そこには、内科の病院と歯医者もあるのだ。そして、激安の定食屋とラーメン屋が並んでいる。更に動物病院も後から出来た。 「明日美は、ここに住んでいた。理髪店の二階に住居があって、そこは一間しかなかった」  リビングを片付け、親子が揃って蒲団を敷いて寝るような感じだ。風呂もあったが小さく、トイレは一階の店のものを使用していた。 「明日美は美少女で、商店街でよく歌っていた。それを動画で見つけた芸能事務所が、声を掛けた」  そういう事になっているが、実際には、公園で踊っていた所を勝手に撮影され、更にCMに起用してしまったらしい。でも、企業イメージの為に、事前に承諾していた事になった。
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