第五章 タイムカプセル 夜

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 三つ目は宝生が書いたもので、恋を貫くだった。恋というのは愛も含めると言って、小さく愛という言葉も追加されて書かれていた。 「まあ、実際、貫いているから凄い」  樫山がしみじみと世分を見ると、世分が小さく手を振った。  小学生の頃から、宝生は世分が好きなのだ。当時、宝生に世分のどこが好きなのか尋ねると、生きている所と行っていた。ならば、世分が死ぬまで好きでいるしかない。 「四つ目が千鶴と日菜子で、二人で一緒に、嫌いにならないと書いた。何かこの時、大喧嘩したからな……内容は忘れたけれど」 「そうそう、それで、日菜子もケンカしたら仲直りしてと泣いて怒って…………」  日菜子は樫山の妹なので、その辺のところは記憶していた。 「千鶴も、話し合ってと泣いた」  それで、ここに嫌いにならないと書いた。  ケンカしないというのは、かなり不可能であったので、仲直りすればいいのだと考えたらしい。そして、どうしたら仲直り出来るのかと考え、嫌いにならなければいいと悟ったと言っていた。 「五つ目は樫山で、家族になろう」  かっこで注釈があり、幸せになろうと締め括っていた。  それぞれが当時の思いを綴ったもので、それが現在に繋がっている。 「樫山は、当時からませた子供だったよな」 「家の後継ぎという、重荷があったからな…………」  千鶴も一時期は、看護士になっていたが、この五つの誓いを思い出し、美容師へ転向した。 「ここ、外れるな…………」  コンクリートなのだが、亀裂が入っていて、綺麗に取り外せそうだ。でも、怪我をしそうなので、軍手を付けて、丁寧に引き抜いてみた。やや空洞が出来たが、元々、オベリスクの中は空洞だった。暗くて見えないが、少し、空洞が増えた所で、誰も気付かないだろう。
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