第一章 タイムカプセル 花

5/11
前へ
/151ページ
次へ
「飲料水のCMで、大人気になった。そして、あの商店街に人が押し寄せた」  狭い通路には人がびっしりと詰め掛け、加登理髪店は二年先まで予約で一杯となった。でも、地元優先だと、地元の人が来た場合は、その場で引き受けていた。 「苦情が出て、一時期、加登理髪店は営業できなかった。でも、通りには出店が出るほどで、夜も人で溢れた」  そのCMはシリーズとなり、更にドラマにもなった。 「だが、一発屋だった。それ以上のヒットが無かった。だから、アスミの、テレビ出演が途絶えた、しかし…………殆ど出なくなって半年後、コンサートが開かれる事になった」  そのコンサート会場は、ここからは少し離れている。  俺は現在の商店街や、公園を撮影すると、タクシーを捕まえた。 「まだ、車を持ってきていなくてさ…………」 「こっちに、引っ越しされるのですか?」  タクシーで向かった先には、今も公会堂があった。この公会堂は、最近、大規模なリフォームがあり、当時の面影が全く無くなっていた。 「コンサートでアスミは引退するとか……実は結婚報告だとか……色々なデマが飛び交い、意外にもチケットは売り切れた」  それは、アスミが純白のドレスを購入していたからだ。  そして、それが死に装束になってしまった。 「中には入れないみたいだ……」  中も改装されているので、後で撮影の許可を取っておこう。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加