84人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうか、兄貴、又、倒れたの?」
宝生の親は、職場で俺の家族の噂を聞いたらしい。
「そう…………意識が戻らなくて…………」
俺は二卵性の双子で産まれた。同じ年の兄、世分は生まれた時から病弱で、入院し続けた。そして、幼稚園も数か月しか通えず、ここに越して来てからは、小学校には一度も行っていない。
「元気になるといいな…………」
そこで、テルテル坊主に晴れを祈願するように、オベリスクに健康を祈ってしまった。
それから、互いの事を話していると、緑の線からも少年がやってきた。
「西川君?」
「あれ、夢明ちゃん」
やって来たのは、夢明の学校の生徒で、同じ学年の西川 佳介であった。
「…………すごいメンバーだね…………アイドルグループみたいだ」
そして、もう一度、自己紹介してしまった。
「上城君。お兄さんが世分で、瑛人なの?もしかして誕生日?」
「そうだよ。兄が一月七日生まれで、俺が八日生まれ。難産で、俺が生まれる前に日付が変わってしまったそうだ」
西川は背の低い、どこか青白い子供であった。しかし、知的な瞳で、真っ直ぐに俺達を見ていた。
「なあ、世分の意識が戻ったら、俺とクラスメートだろ?一度、見舞いに行ってもいいか?」
「いいけれど、意識が無いよ……」
俺は、今は簡単に行っているが、この意識が無いという台詞が言えるようになるまで、一か月はかかった。余りに辛過ぎて、言葉に出来なかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!