第六章 虹を織る丘 青

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「…………学校の備品を盗んだのは、先生だよ。アパートを引っ越す時に、品物で気付いて通報されて捕まる」  そして、宝生はその事を記憶して、先生が引っ越す時に大人に行って貰った。そして、先生が捕まった。  それから、宝生は世分を師と崇めていて、推理の天才だと信じていた。しかし、世分は推理しているのではなく、夢のように見ている。そして、俺は世分が見ているものが分かる。 「世分は凄いよ。未発売のゲームの内容まで知っている」 「…………俺も、世分が凄いのは知っている。だからさ…………俺の夢はさ、世分が皆にも凄いやつだと認められてさ、一緒に生きる事だよ」  世分は本当に凄い。時折、夢で見た話しを教えてくれるのだが、それが物凄く面白い。毎回、続きを聞きたくて、病室に通ってしまうほどだ。俺は、世分の言葉が画像で見えてしまうので、映画を見るよりも凄いのだ。そのまま絵にしたら、きっと面白い漫画になってしまうだろう。 「宝生、剣道の時間だぞ」 「あ、本当だ。じゃあ、また明日」  俺は体操を止めてしまったが、世分の為に絵を描き始めた。すると、世分が高熱の時に、俺は中学で体操選手になると言っていた。ならば、俺は中学生になったら体操部に入ろう。  公園の花壇に座って夢明を見ていると、横に樫山がやって来た。樫山も習い事で忙しいのだが、合間を見つけると、走ってここにやって来る。 「上城、千鶴は可愛いな」 「好きなの?」  千鶴は、兄から見ても、とても可愛い。夢明が美少女なので霞んでしまいそうだが、千鶴は千鶴の良さがある。だから、並んでいると、二人は四倍になって目立つ。互いの良さが引き立ってくるのだろう。  俺が樫山を見ると、真っ赤になっていた。  樫山は普段はクールで無表情なので、感情が表に出るという事が珍しい。
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