第一章 タイムカプセル 花

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 少年の頼みが無ければ、タイムカプセルなどしなかっただろう。 「そこで、又、小さな事件が発生した。そのタイムカプセルには、級友達の記念品や寄せ書きも入れていて、そこにアスミの日誌があると噂になった」 「アスミはアイドルになった……ファンは、アスミの私物を欲しがった?」   俺は小さく頷くと、コーヒーを飲み干した。 「埋めてから、たった一年で、タイムカプセルは掘り返された」  ただ掘り返されただけではなく、中身がグランドにばら撒かれていた。犯人が、アスミの日記を見つけられずに、散乱させたのかもしれない。バラ撒かれた中には、日記のようなものは無かったとされている。 「タイムカプセルの中身は、持ち主に返されていった。そして、無かった物があった。それは、少年が皆に宛てた手紙と、アスミの私物だった」  アスミの私物は、犯人の狙った品であったので、無くなっていても不思議ではない。しかし、どうして手紙まで無くなっていたのかは、不思議であった。 「そして、増えていた物があった」 「増えていた?」  それは、名前の記載が無く、しかも、誰も自分の物だと名乗り出なかった。 「増えていた物は何ですか?」 「一冊のノート」  そのノートは、どこにでも売られていた大学ノートで、俺も当時は使用していた。 「ノートの表紙には、赤いマジックで、終了と書かれていた。だから、未解決事件マニアの中では、赤のエンディングノートと呼ばれている」  そのノートは、担任だった教師が預かる事になった。
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