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少年の頼みが無ければ、タイムカプセルなどしなかっただろう。
「そこで、又、小さな事件が発生した。そのタイムカプセルには、級友達の記念品や寄せ書きも入れていて、そこにアスミの日誌があると噂になった」
「アスミはアイドルになった……ファンは、アスミの私物を欲しがった?」
俺は小さく頷くと、コーヒーを飲み干した。
「埋めてから、たった一年で、タイムカプセルは掘り返された」
ただ掘り返されただけではなく、中身がグランドにばら撒かれていた。犯人が、アスミの日記を見つけられずに、散乱させたのかもしれない。バラ撒かれた中には、日記のようなものは無かったとされている。
「タイムカプセルの中身は、持ち主に返されていった。そして、無かった物があった。それは、少年が皆に宛てた手紙と、アスミの私物だった」
アスミの私物は、犯人の狙った品であったので、無くなっていても不思議ではない。しかし、どうして手紙まで無くなっていたのかは、不思議であった。
「そして、増えていた物があった」
「増えていた?」
それは、名前の記載が無く、しかも、誰も自分の物だと名乗り出なかった。
「増えていた物は何ですか?」
「一冊のノート」
そのノートは、どこにでも売られていた大学ノートで、俺も当時は使用していた。
「ノートの表紙には、赤いマジックで、終了と書かれていた。だから、未解決事件マニアの中では、赤のエンディングノートと呼ばれている」
そのノートは、担任だった教師が預かる事になった。
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