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建物の壁に挟まれており死角になっている。栗毛の若造は壁にもたれたままニヤニしたまま見下ろしている。イリアは肩から降ろされて仰向けに押し倒されていた。イリアの心臓が破裂しそうになる。顔を引き攣らせて抵抗しようとするが、衣服の留め具を引き千切られてしまった。肩や鎖骨が丸見えになっている。何とか抗おうと手足を揺らして必死で逃げようとする。
「シード! 助けて! シード! シードーーーーーーーー!」
救いを求めるようにして叫ぶと、いきなり、赤毛の男に顔を乱暴に平手打ちされていたのだ。
「うっせぇな。おとなしくしろってんだよ!」
イリアは叩かれた弾みで意識が飛びそうになった。赤毛の男は暴れるイリアをねじ伏せている。そいつの臭い息と脂ぎった四角い顔が近付いてきたものだから絶望と嫌悪感で背筋が毛羽立ち心臓が張り裂けそうになる。
「や、やめて……」
抵抗しようとしたイリアの顔を赤毛の男がヘラヘラしたまま見下ろしている。その時、馬の蹄の足音が建物の向こうから反響したのだ。赤毛の男はわずらわしげに振り返っている。カタカタという靴音の後、頭上からシードの凛とした声が響いた。
「おい、おまえら何をしている!」
シードは、まず初めに栗毛の男の背後に詰め寄った。その腕を回して身動きをとれないようにして重たいグラディウスの刃先を相手の襟元に押し付けて威嚇する。恐怖に駆られた栗毛の男は怯えたように命乞いを始めた。
「や、やめろ。やめてくれっよーーー! おおっ、おい、早まるな! やめてくれ」
「おい、そこの赤毛。イリアから離れろ! でないと、おまえの仲間を殺すぞ!」
しかし、赤毛の男は自分よりも細身のシードの存在を舐めきっている。だから、シードに対して偉そうに言い放っている。
「うっせぇよ。カッコつけてんじゃねぇよ。邪魔すんな。これはオレの女だ」
「黙れ。おまえのものじゃない!」
叫ぶよりも前に、シードは栗毛の男の喉を締め上げて気絶させている。電光石火の勢いで重たい剣先を振り上げている。
「てめぇ、弟になにしやがる」
赤毛の男は腰に下げていた小刀を構えてシートに挑もうとする。すると、シードは斬るとみせかけてから、ひょいと姿勢を変えて回し蹴りをくわせた。思いがけない形で脇腹を蹴られた赤毛の男は呻いて膝を落としている。
「おまえ、よくもイリアを殴ったな」
そう言うと、シードはもう一発、赤毛の男の顔を蹴り倒した。激しい一撃によって薙ぎ倒された赤毛の男は情けない顔つきのままうつ伏せに倒れている。
「ゲホッ!」
鼻血にみまみれて息が出来なくなった赤毛の男を睥睨するシードは容赦なく詰め寄り、そいつの喉仏に刃先を当てている。殺されると感じた赤毛の男は怯えながら手を合わせて懇願した。
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