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<1・提案>
「え、えええ……?」
美冬の言葉に、咲は苦い顔をしてきた。その反応こそ、美冬にとっては意外でしかなかったわけだが。
小学五年生の、総合学習のグループワーク。二人~三人組を作って、学校や地域に纏わる調べものをして作文を書いて発表する、というもの。美冬と組んだ時点で、先生が好みそうのな健全なテーマなど提案するはずもないということくらい、親友ならわかっていそうなものであったのだが。
「北見川の由来とか、オシロ遺跡の歴史とか、お寺のこととか?……まさかそういうみんながやりそうなこと、テーマにしようと思ってたわけじゃないよね?」
反論されるよりも前に、美冬は畳みかける。
「そんなのやってもつまんないじゃん。ていうか、ぜってー他の班とテーマ被る。あたしは嫌だね!」
「そ、そりゃ……みんながやってきそうなテーマってそのへんだと思うし、被るかもしれないけど。でも、学校の怪談なんて調べて発表したら怒られない?学校のイメージ悪くなるし」
「何も、外部のオトナに向かって発表会するわけじゃなしー。ただの総合のお時間の発表ですよ?クラスで公開するだけですよ?そんな堅苦しい内容じゃなくても良くない?」
「で、でも」
クラスでも優等生。成績優秀で真面目な咲は(その咲と、正反対のタイプの美冬が親友というのがながなか不思議なところではあるのだろうが)、こういう授業も極めて真正面から取り組みたかったところはあるのだろう。
だがしかし、忘れてやしないだろうか。
テーマが被ったら最後、他の班とは内容の優劣で決まってしまうのである。もっと作文が上手い人、発表が得意な人がクラスにいくらでもいる。同じ土俵で勝負したら、絶対こっちが不利に決まってるのだ。
「テーマ被って、露骨に比べられる方があたしは嫌デス」
美冬はきっぱりと言った。自分が強く推せば、大抵のことは咲が根負けしてくれると知っているからだ。何も、最近流行のゲームとかSNSとか、やれ都市伝説の大御所について調べたいと言っているわけでもなし。美冬的には、これでも大幅に妥協しているつもりなのである。
「みんながやらないことやった方が面白いじゃん。安心しなよ、聞き込みとかそういう咲ちゃんが苦手なのは全部あたしがやるからさ!適材適所って言うじゃん?」
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