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ふいに彼女の香りがして、はっとする。
なんのことはない。
買ってきた新しい洗剤の香りが、彼女のよく纏っていた香りに近かったというだけだ。
これは、そう、ラベンダー。
珍しい香りではないのだろう。
けれど、あの日以来、この部屋に独りきりで過ごしている俺にとっては、あまり馴染みがなくなっていた香りだった。
思わず、きょろきょろと、部屋の中を見渡してしまった。
もう、彼女はいないというのに。
あの笑顔を見ることは、もう、ないというのに。
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