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ぽかぽかする紙
僕たちは今日、役所に心がぽかぽかする紙をもらいに来ていた。人生で初めての心がぽかぽかする紙に僕の心はとてもぽかぽかしていた。彼女の心もぽかぽかしているに違いない。なぜなら彼女の表情は僕よりも晴れやかな笑顔だったからだ。役所の職員さんに心がぽかぽかする紙をくださいと言って貰い、家に帰った。
家に帰ってから僕らは一緒に心がぽかぽかする紙に自分の名前や住所などを書いていった。それを書いているだけでも心がぽかぽかしてくる。
書き終わった僕たちは僕の両親に保証人になってもらうために心がぽかぽかする紙を持って両親のもとへ行った。それを書いている両親もとても笑顔でこの紙はみんなの心をぽかぽかさせるんだなと思った。
すべてを書き終わった僕たちはまた役所にぽかぽかする紙を持ってきていた。それを職員さんに提出すると、おめでとうございますと言って貰えた。やはりここでも心がぽかぽかした。
それから僕らはポカポカするような毎日を送っていた。朝起きると横で彼女が寝ていて、家を出る時には行ってきますのキスをする。帰ってくると彼女がご飯を作って待っていてくれる。とても心がぽかぽかしていた。
そんな生活を1年2年と繰り返していくうちに5年目にはいってきますのキスをしなくなった。10年目には彼女は僕の帰りを待たなくなった。15年目には朝起きても彼女は横にはいなくなった。
だんだん心がぽかぽかする日々から心がチクチクする日々へと変わっていた。
そんなある日僕は彼女に心がチクチクする紙を持って提案した。すると彼女は表情を変えずにうなずいた。そうして僕らの心がぽかぽかする生活は終わりを告げたのだった。
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