すずしろの花の顔はフォトノフォビア

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 彼女の場合は、フォトノフォビアに典型的な写真に対して発症するタイプでした。彼女は、物心つく頃には普通に写真を眺めて笑う子どもだったといいます。彼女は高校生のときに美術写真のモデルとしてスカウトされ、活躍していたといいます。しかし、ある日のことでした。写真集用に仕上がった写真を見せられたときに、彼女はその写真が白紙だったので、最初はプリントに失敗したのだと思ったそうです。けれどもカメラマンは、冗談はもうおしまいだと言うだけでした。何枚も何枚も、白紙の写真を見せられた彼女は、とうとう泣き出してしまいました。写真家が事情を聞いたらとてもびっくりしましたが、たまたま都市伝説的なフォトノフォビアの話を知っていたので、それを彼女に話したのです。それから彼女は様々な病院に行くのですが、どこもフォトノフォビアを扱うところなど少なく(精神科医でさえもその存在を知っている者は少ないですから)、いろんな病院を巡ってようやくフォトノフォビアを扱ってくれる先生を見つけたとのことでした。  そして治療を続ける中で彼女は、動画サイトにフォトノフォビアの現状を訴える動画を複数投稿し始めたのです。そしてその動画をぼくがたまたま見つけたという話ですね。動画ならある程度彼女は認識できましたが、動画を停止すると真っ白な画面しか見えないので、動画をアップするのも苦労すると言っていました。ぼくは最初、彼女の動画を観るだけでしたが、次第にコメントも残すようにしました。最初彼女からの返事はなかったのですが、あるときすみませんでしたとのコメントが返ってきました。なぜ彼女が謝ったのかわからなかったのですが、その理由が判明しました。彼女の文章はこうでした。
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