すずしろの花の顔はフォトノフォビア

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 あれから半年、ぼくは美しい情景の前でカメラを構える。一面の大根畑。大根の白い花が綺麗に咲いている。その中心にはもうひとりの白い花が可憐に咲き誇っていたのでした。  その美しい写真をプリントアウトして、彼女に見せると、彼女は言ったのでした。 “真っ白だね。”  ぼくは返事をします。 “真っ白な花が一面に咲いているからだよ。”  ぼくはその花のひとつひとつに小さな顔を描き込みました。そして一番大きなすずしろには、花を重ねて描き込んだのです。 “これがあなたが観ている世界? シュールだね。” “それって、下手ってこと?” “ううん、その逆、超現実的でとても素晴らしい絵だわ。ありがとう。”
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