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奈落の底へ突き落とされたような表情の清美を置いて、二人は去って行った。
そんな類の恐怖を与えるつもりはなかった。これは、言わば変質者扱いをされたのだ。
その日、居てもたってもいられなくなった清美は、頭をフル回転させた。
どうすればいい。
どうすれば、マスクを取れる。
どうすれば、この醜い口元を、人間に晒すことができるのか──。
「そうだ!」
清美は思わず声を発し、手を叩いた。
その答えは、奇しくも先ほどの男女が持ち合わせていた。
男が口にした言葉、美容──。
ポツンと立つ街灯は、不敵な笑みを浮かべる清美を、不気味に照らし出していた。
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