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「こんにちは。院長の三好です」
「あの、わたし……」
翌日、清美はビルの最上階にある病院を訪れていた。
わざと不安そうに目を泳がせる清美を、三好は穏やかな目で見つめてきた。
「今日は、どういった御用件ですか?」
「あの、美容整形を……」
三好は腕を組んだ。静かな眼差しで、清美の顔を確かめるようにマジマジと見つめる。
やがてひとつ、大きなため息をつくと、ニコッと微笑んだ。
「このままでも、充分おきれいですよ?」
「きれい?」
「ええ。意志の強そうな目と、整った骨格。いわゆる美人です。マスク越しでも、鼻筋が通っているのがわかります。きれいです」
久しぶりの言葉に、思わず頬が緩んだ。
しかしそれも一瞬のこと、清美の内に秘められた本能が、瞬時に目を覚ます。
「わたし、きれいですか?」
清美の手が、スッとマスクに伸びる。
片耳から耳掛けを外し、頬骨辺りまでゆっくり捲ると、そこから一思いに剥ぎ取った。
「これでも、きれいですか?」
「ああ、なるほど。うんうん。なるほどね……」
──え? なるほど?
拍子抜けする清美に、三好は微笑みかけた。
それは穏やかではあるが力強く、安心させてくれるような笑みだった。
「清美さん、大丈夫です。私に任せてください」
「え?」
戸惑う清美の心中を勘違いした三好は、諭すように語り始めた。
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