わたし、きれい?

5/8
前へ
/8ページ
次へ
「こんにちは。院長の三好です」 「あの、わたし……」  翌日、清美はビルの最上階にある病院を訪れていた。  わざと不安そうに目を泳がせる清美を、三好は穏やかな目で見つめてきた。 「今日は、どういった御用件ですか?」 「あの、美容整形を……」  三好は腕を組んだ。静かな眼差しで、清美の顔を確かめるようにマジマジと見つめる。  やがてひとつ、大きなため息をつくと、ニコッと微笑んだ。 「このままでも、充分おきれいですよ?」 「きれい?」 「ええ。意志の強そうな目と、整った骨格。いわゆる美人です。マスク越しでも、鼻筋が通っているのがわかります。きれいです」  久しぶりの言葉に、思わず頬が緩んだ。  しかしそれも一瞬のこと、清美の内に秘められた本能が、瞬時に目を覚ます。 「わたし、きれいですか?」  清美の手が、スッとマスクに伸びる。  片耳から耳掛けを外し、頬骨辺りまでゆっくり捲ると、そこから一思いに剥ぎ取った。   「これでも、きれいですか?」 「ああ、なるほど。うんうん。なるほどね……」 ──え? なるほど?  拍子抜けする清美に、三好は微笑みかけた。  それは穏やかではあるが力強く、安心させてくれるような笑みだった。 「清美さん、大丈夫です。私に任せてください」 「え?」  戸惑う清美の心中を勘違いした三好は、諭すように語り始めた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加