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暗い夜道にポツリと立つ街灯の下、清美は我に返った。
誰も来ないものだから、ついつい物思いに耽ってしまった。
あれから約一年。
「なるほど、これは……随分と、古い傷のようで」
三好は何度となく首をかしげたが、その都度研究を重ね、全力を尽くしてくれた。
一度、本能と理性の狭間に立たされた清美は、よくわからないことを口走ってしまったこともあった。
「先生、目を。目を思い切り開いてください! みんながびっくりするくらい」
「なるほど、こういう業界にいる者ですから。いいところをご紹介しますよ」
案内されたのは、メイクの達人のいる美容院だった。
「あらやだぁ、三好ちゃん。こんなにきれいな子連れてきてぇ。嫉妬しちゃうー」
ムキムキの男性は、そう言って目元にメイクをしてくれた。
「三好ちゃん。この子だって、恥ずかしいじゃない。そんなに見ちゃってぇ」
「い、いや、これは……研究です! 私は希望を」
「はいはい、知ってるわよー」
ムキムキの美容師はそう言って、清美の座る椅子をクルッと回し、三好の方に向けた。
突然目が合った清美と三好の顔は、同時に一瞬で真っ赤に染まった。
ムキムキの美容師はそれを見て、いたずらな笑みを浮かべて三好に言った。
「はいはい、できたわよー。これが三好ちゃん、あなたの希望ね?」
「は? え?」
戸惑う三好に清美は、はにかみながら口を開いた。
「わ、わたし、きれい?」
しかし返事は、その頭上から聞こえてきた。
「きれいよ。あたりまえじゃない」
こくりと頷いた清美の耳元で、ムキムキの美容師はコソッと囁いた。
「それは治療が終わってから聞くのよ。ね?」
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