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El Aristócrata ~貴族さま~
聖暦1580年代、遥か海の向こうに未知の大陸〝新天地〟を発見したエルドラニア帝国は、この広大なフロンティアの植民地化を進め、世界最大の版図を誇る大帝国へと成長を遂げていた……。
だが、そんなエルドラニアに対して脅威を感じる敵国アングラントやフランクルは、私掠船(※公に海賊行為を認められた船)によるエルドラニアの海上輸送妨害を画策し、また、新天地のエルドラニア人社会から弾き出された他国の移民達の中には、生きるために海賊となって、かの国の交易船を襲う者も少なくはなかった。
エルドラニアの新天地における最初の植民地、エルドラーニャ島の北に浮かぶトリニティーガー島……その小島を根城とするそうした海賊達の中の一人に、通称〝貴族さま〟の名で呼ばれる船長ベンジャミュー・ブラックバードもいた。
ゴージャスな茶髪の巻き髪、少々お腹の出たメタボ体型に濃い緑色のビロード製プールポワン(※上着)を纏い、首には白い襞襟、胸には豪華に宝石を散りばめたプロフェシア教のシンボル〝神の眼差し〟付きの数珠を下げるというその姿は、確かに一見、王侯貴族を彷彿とさせるような人物ではある……。
だが、かといって彼は貴族でもなんでもなく、アングラント、ピクトラントとともにアルビトン連合王国を構成するグウィルズ王国の、しがない庶民の出身である。
ではなぜ、このベンジャミューが〝貴族さま〟と世間から称されるようになったのか? その理由をちょっとお話しさせてもらおう──。
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