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「そのうち、身体が緑色になっていくだろうね。憑き物オタクとしては、どんな緑色になるのか気になるところだなぁ。知ってる? 河童の正体って、江戸時代に間引きされた子供の水死体なんだよ。あぁ、間引きっていうのは、生活が苦しくなって人為的に子供を殺すことね。そうして近くの川に流された子供の死体を隠すために、あれは河童という妖怪だって嘘をついたのが始まりで――」
「やめてよ! 気持ち悪い……」唐突に饒舌に話し出す螢川くんを、甲高い声で遮った。「何なの、さっきから」
縮こまって睨みつける私を、螢川くんは優しく目を細めて見つめる。
「僕はただ、クラスメイトが沈むのを見たくないだけさ」
「沈む……?」
「そう、水に。鬼除川の底に、ね」
心臓が、また大きく跳ねた。
手の先が小刻みに震え、冷えていくのを感じた。
おによけがわ、と螢川くんは言った。私が唯一頼りにしている川の名前を、確かに口にした。
「何で、知ってるの……? 本当に、ストーカーなの?」
螢川くんは、ぷはっ、と楽しそうに吹いた。
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