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「霊は寂しがりやだからさ、合葉さんに仲間になって欲しいんだよ。だから、川底に引き摺り込む。合葉さんは、これからどんどんと身なりが河童に近付いていって――自ら川に飛び込みたくなる」
がくっ、と膝が折れ、地面に手をついた。
もう、限界だった。
しがみつくように胸を押さえ、息を整える。
「どうしたらいいの……? 私は、どうしたら――」
「簡単だよ。つけ入る隙をなくせばいい」
見上げると、螢川くんは眉を下げて微笑んでいた。
何だか、苦しそうに見えるのは気のせいだろうか?
「悩み事を誰かに相談すればいい。ただ、それだけでいいんだよ」
呆然としていると、間抜けなカラスの声が辺りに響き渡った。
あっ、と螢川くんは空を見上げる。
「もうすぐ逢魔が時だね。早く帰った方がいい。あ、そうだ。塩を舐めるといいよ。応急処置だけどね」
それじゃあ。と螢川くんは片手を上げ、踵を返す。
私はその場から動けずに、少し曲がった背中を見送ることしか出来なかった。
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