憑き物探偵?いえ、ただのオタクです。

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「……何、これ……」    洗面所の鏡に手鏡を向け、頭頂部を確認した私は絶句した。    禿げている。  小さく、丸く。確かに禿げている。 「嘘でしょ……?」  いつからだろう? パステルグリーンの襟をぎゅうっと握りしめる。綺麗な色味に惹かれて買ったばかりのこのパジャマが、何だか妙に気持ち悪く思えてきてしまった。  十円ハゲ。この世にあることは知っていたのだけど、私には関係ないものだと勝手に思っていた。  カツラ……。今時、百均にでも売っているのかな。いや、そんな安っぽいものじゃ駄目だ。すぐにバレて嗤われるに違いない。  今月のお小遣いは使い果たしてしまったし、どうしよう……。  唇を引き結び、鏡のなかの自分から目を逸らした。 しょうがない。  私は即刻二階に上がって部屋の鍵を閉め切ると、数本のアメピンで十円ハゲと格闘した。なんとか地毛で覆い隠して誤魔化すのだ。それくらいしか、私には出来ない。  何度も何度もピンの先で頭を傷つけ時間を溶かしていると、心までもが禿げていくようだった。こういう時、お姉ちゃんだったら上手くやれるのかな。幼い頃からの癖で、つい考えてしまう。私と違って、むしろお洒落な髪型にできそう。私と違って……。  短針と長針が零で重なった頃、ふぅ、と胸を撫でおろす。  応急処置が完了した。まだ、この程度なら大丈夫そうだ。早い内に気づけて良かった。色々したら何とか治るかもしれない。その色々は具体的に思いつかないのだけど……。まぁ、明日(あす)は明日の風が吹くということで。まぶたの重みに耐えきれなくなってきた私は、ピンを挿したまま布団を被った。
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