細い身が絡まり合い、一本の紐となる

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*  翌朝、僕は花ちゃんを車に乗せてユリさんオススメの神社へ初詣参拝しに行った。 「すごい人だね」 「人気っていうの分かるなぁ」  ユリさんも言っていたけど、元々このエリアは昨年から大ブームになっていて全国から観光客が押し寄せているらしい。  尚且つこの神社は縁結びのご利益があるとの事で参拝客のほとんどが女性だ。 「三が日避けたのにそれでもこんなに多いのは想定外だな」 「恵里子さんの言う通り早めの時間に出発しておいて良かったよね」 「今より時間ズレたら駐車場停められなかったね、きっと」  石段を上がって境内を見渡すと、本当に人が多くて目眩(めまい)がしてくる。 「迷子にならないでよ?花ちゃん」 「ならないよっバカにしないでっ!」  僕の助言に口を尖らせて反論している花ちゃんだけど、僕が差し出した手にすぐ指を絡ませてきたんだから僕の頬も自然と弛んだ。 「天気いいよねぇ参拝日和だ♪」 「午後もあったかいらしいよ。お昼ご飯どこで食べるか検索しておくね」  本殿までの道のりは距離の意味でも時間の意味でも遠く、長蛇の列に並んでいると頭がクラクラしてくる。  田舎生活に慣れ過ぎていた花ちゃんも、もしかしたら今の僕以上にゲンナリしているんじゃないかと予想したけれど、隣で表情を確認する限りではその心配がなさそうでホッとした。
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