花から求められる犬と、主人との約束

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「カスミさんそれじゃやりにくいよ」 「腰上げ過ぎちゃったかな、ごめんなさいね」  カスミさんは僕の言う通りすぐに腰をマットレスにぺたんとくっつけ、お尻フリフリもやめて僕がショーツの端を噛むのを待ちだした。 (これも仕事だ。カスミさんのチワワとして精一杯努めなくちゃ……)  ルールさえ守ってくれるのであれば、僕はカスミさんの為に今からの60分誠心誠意働かなければならない。  意を決してカスミさんの望み通り鼻をお尻に密着してショーツの端に唇を落とした。 「あん♪お鼻冷たぁい♪」  甘えん坊さんコースは唇でもお客様を癒すから、お湯で事前に指を温めるなどということはしない。まして鼻先なんてする必要がないから当然体表面の温度が低めの僕の鼻先は冷たい。    しかしそれが余計に「犬っぽさ」を演出するようで、カスミさんは嬌声(きょうせい)をあげて喜んでいた。 「んっ」  状況的に他人のお尻の匂いを直接嗅ぐ事になってしまっているけれど、来店前に入浴を済ませたのかいつも香ってくるボディソープの匂いが今日ばかりはより強く感じて僕の嗅覚を刺激している。  不快だとか(くさ)いだとかは感じない代わりに、なんか変な気分が高まってきた。 「っ……く、……ん」  それから舌先でショーツを手繰り寄せ、前歯でガッチリと掴むと、ゆっくりそれを引っ張る。
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