花から求められる犬と、主人との約束

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「ねぇ樹くん、僕ってそんなに予約取りにくいセラピストになってるの?」  タブレット端末をテーブルの上に立てながら僕が隣の樹くんに訊いてみると 「来週からリョウくんが1日4人受け持つ事は、お客様にとっても店側にとっても喜ばしい事なんだよ」  と、いつものようにキーボード入力しながら返答してくれた。 「いつの間に僕ってそんなに人気が出たの?僕の固定客は全体の2割だよ?」  年明けにご主人様も僕を買いかぶるような事を言っていたけど、どうも信じられない。 「セラピストの人数を考えてみなよ。1人で2割って物凄い事だからね?リョウくんのオイルは好評で、リピートしたいと望むお客様は多いんだよ」 「オイルは無資格で、ご主人様から教えてもらっただけなんだけどね。それは先輩方も同じ条件の筈だよ?」 「吸収がいいんじゃないかなリョウくんは。年齢が若くて人生経験も少なく、ご主人様の崇拝者であればおのずと純粋にインプット出来る」 「……そうなんだ」 「確かに予約が集中し始めたのは12月からかな。まぁ時期的なものでもあるんだろうけど」 「稼ぎ時なんだよね、12月って」 「そうそう。よく覚えているね、太地くんは」  来週からは午後5時からスタートして、午後10時半に終わる。  部屋の清掃は樹くんにも手伝ってもらうし、タブレット返却後にご主人様の部屋でしていた「見学」は免除になった。だからアパートへ帰宅する時間は以前と変わりがない。
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