花から求められる犬と、主人との約束

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「樹くんに迷惑かかるよね、ごめんね」 「別にいいよ。どうせ勤務の最初は使用されてない部屋のチェックや清掃から始めるんだから。それが前日に一部屋分早まったと思えば何にも迷惑になってないさ」 「樹くんに清掃手伝ってもらうなら、枠を増やしたってまた『楽で羨ましい』って言われちゃうのかな……」  カスミさんとの「ショーツ引っ張り」も報告しておこうか考えあぐね、樹くんの方を向きながら訊いてみた。 「またその話?『ケースケくんは悪気あってリョウくんに言ったんじゃない』って何回も言ってるだろ?」 「でもやっぱり気にしちゃうよ。特に僕には『粘膜に触れない』って制約があるから、ケースケくん達に比べれば精神的負担も少ないのは確かだもの」 「それは太地くんが未成年だからだよ。18歳超えてるから法的にはそこまで制限しなくていいんだろうけど、ご主人様的に『成人してから』という思いがあるんじゃないの?」 「……そう、だけど」 (樹くんは知らないんだ、僕が口や手で粘膜に触れるのを禁止されている本当の理由を)  店の従業員達の間では「僕が未成年だから」お客様には「チワワだから」という理由をつけているんだけど、本当の理由は「仮契約で研修扱いになっているから」だ。ご主人様にとって未成年の僕に舐め犬行為をさせるという事に抵抗があったらしく、「20歳まで仮契約」という話をご主人様との間で交わしている。
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