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「太ちゃん!今日もお仕事お疲れ様!」
「夜遅いのにここまで迎えに来てくれてありがとう花ちゃん」
「だって太ちゃんと外でお話する時間を作りたかったんだもん」
「女性が深夜帯に外を歩いている事そのものを心配してるんだよ僕は」
時刻は22時50分。
最寄り駅に到着するなり僕はいつもと反対側の出口へと向かい、夜の公園へと足を踏み入れた。
公園へ入ってすぐの場所に設置されている街灯の下にはコートに身を包んだ花ちゃんが缶コーヒーを手に持ちながら立って待っていて僕をベンチへと誘う。
「……それでまた持って帰って来たんだ?」
「うん……店長その場に居なくて突き返せなかった上にお世話になってる先輩も傍に居たから持って帰らざるを得なかったんだよ」
ベンチに並んで座り僕が温かいコーヒーを受け取る流れで花ちゃんはさっきまで僕が持っていた無地のクラフトバッグの中身を覗き込む。
「そっかぁ……先輩にはバレたくないよね、やっぱり」
「うん、揶揄われるからね。100%」
先月とほぼ同じ流れ……そう、今回も紙袋の中身はクロワッサンでもマカロンでもない。
花ちゃんも覗き込む前からそれを察していたようだ。
「ゴムの箱だけなら誤魔化せてもオマケの『とろとろ入浴剤』なんてのも入ってたら先輩にバレないように持って帰るしかないよね」
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