48人が本棚に入れています
本棚に追加
花ちゃんとお風呂に入るのは2度目になる。
「すっごく良い匂いがするね、なんで?」
手を繋ぎながら一緒に脱衣所に入り花ちゃんを抱き締めると、さっきまでは香らなかったフローラルな香水みたいな匂いに気付いて僕はすぐに顔をあげた。
「太ちゃんが食器洗ってくれてる間に、グロスつけたの。タイチに喜んでほしくて」
僕の見つめる先にはすっぴんの可愛らしい花ちゃんの笑顔と、今から2人で過ごす期待感に満ちたような潤んだ唇との、相対するものが入り混じった光景が現れ
「お風呂の後でつければいいに」
蕩けるようなリップグロスごと、まずはその唇に舌を滑らせた。
「んっ……タイチくすぐったい♡」
「ワザとそうしてるんだよ、今の僕は犬のタイチだから。
犬が飼い主に人間みたいなキスしたらおかしいでしょ?」
「服を脱いだらタイチ」の法則は、脱衣所でも適用される。
「ふふっ♡確かにそうだけど、でもベッドでは」
「今はタイチに集中したいんだってば」
確かに花ちゃんの言う通り、タイチの時でも人間らしいキスはする。だけど『お風呂』という期待感膨らむ場においては一層犬である意識を強く持っていたかったんだ。
(そうじゃないと……ゴム無しの空間でおかしな事をしてしまいそうだし)
最初のコメントを投稿しよう!