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めまい
「な、なんかすごいわね…」
美津子がコーヒーのおかわりと茶菓子を持ってきた。小さく一個一個包装されたカステラ菓子だ。
「恭子が彼氏と温泉行ったお土産よ。あたしたちも来週行くはずだったけど、もうそんなんじゃ行けないわね」
総務課の光澤恭子と資材課の高井正敏は恋人同士で、しかし恭子の方はすでに結婚している。まあこいつらも社内不倫の仲間だ。
「べつに行こうと思ったら行けるぞ。レンタカーデカいの借りておまえが運転なら」
俺じゃこの体だから運転は無理だと思う。
「よかったわ、予約していたのがお風呂付の客室で。そんなんで共用の露天風呂なんか入られたらもう大変な騒ぎよね」
なんやかんや言いながら美津子はもう馴染んでいる。だがそんなとき、俺は強いめまいを感じた。
「真一!」
美津子の声が聞こえて、俺の目の前は真っ暗になった。
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