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動物病院にて
また夢を見ていた。そこは巨大なトンボとかチョウチョだとかがいる原始の森だった。俺はそこで、ただ空を眺めていた。
「真一!」
また美津子の声だった。なにか俺に用なのか…?うっすらと目に光が差し込んでいる。ああ、なんだここは?俺はうつぶせに寝ていた。どうやらここは病院の…手術室か診察室らしい。
「真一!聞こえる?」
「あ、ああ…聞こえるよ…」
俺はボーっとしている頭をさすりながら声のほうを見た。俺の目は五個あり、両側の二個は複眼で、頭部に三個の単眼がある。複眼はだいたい人間の目のように見えるが、単眼は光の強弱や赤外線や紫外線を感知できる優れものだ。
「ここはどこだ?」
「病院よ。あんたが急に意識失っちゃったから。ちょうど廃品業者が来てたからトラックで運んでもらったの。マジ焦ったわ」
「病院か…」
にしては壁に猫だか犬だかのポスターがたくさん貼られている。あーもしかして…。
「あのさ、ここ、もしかして動物病院?」
まあ虫を診てくれる病院なんかないもんな。
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