虫

真ちゃんは人間です！

「で？なんで俺はこんなところに？」
「だから、ふつうの病院じゃ受け入れてくれなかったのよ」

まあそりゃそうだ。虫なんかが外来の急患で来られても困るだろう。でもそれなら博物館とか昆虫を扱ってるペットショップの方がよかったんじゃないか？

「具合はどうかな？」

白衣を着た若い男がそう聞いた。

「あんたはドクターか？」
「まあいちおうね。でも動物病院でドクターと言われるのはいささか照れちゃうけどね」

そう言ったその医者はニッコリ笑ったが、目だけは笑っていなかった。
俺はその目に問いかけてやった。

「獣医だろうが医者は医者だろ？」
「ふむ、虫だけど相当な知能だ」

そういう返しで来たのは、まだ俺が人間だと、いや元人間だと知らないのかな？

「だから真ちゃんは人間なんです！たまたまこんな体になっちゃったんです！」