鏡のなかのカフカ

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鏡のなかのカフカ

それは何気ない日常の始まりのはずだった。 朝起きて、髭をそろうと鏡を見る。当然そこには知らない顔が映っていた。いやそうじゃない。知っているけどマジあんまり見たくないモノ。触角はともかくじつに複雑な構造を持つそれは、醜悪で禍々しい美しさを持っている。まさに昆虫だった。 「そういやこういう小説あったな…」 ある朝目覚めると一匹の虫になってたってやつ。その小説は人生や世界に絶望したやつの意味を持たない嗚咽と怨嗟と絶望、と解釈していたが、なるほど見た目はその通りだと思った。だがそれ以外は絶望とかは俺はとくに感じなかった。
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