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守護竜
北の地を守る守護竜の夫婦。
守護竜の夫婦は生涯、子を一人だけ産み落とす。
これは数百年前の話、いにしえの守護竜は余に言った。
「娘、シャンを守って」
「ジン、君になら娘を任せられる」
「ありがたきお言葉、この命をかけて護ります」
守護竜の娘ーーシャンが百歳となったときに結婚して、余たちは番いとなり余達が北の守護竜となった。
前守護竜は旅立ち古龍たちが集まるという、谷に向かい天寿まで番と過ごすのだそうだ。
新北の守護竜として、大地に祈りを。
「さあ、妻よ。大地に祈りを捧げよう」
「はい、旦那様」
嬉しそうに余を旦那と呼ぶ、だから余も、シャンを嫁と呼んだ。
ここは牢屋か……良い夢はいつも途中で終わる、寂しいな。
一度、王都の北の方にモンスターがでたと、王都全体に結界を張った……魔力の枯渇、体は重く、動かない。
いま、番がそばにいない余ではそれが精一杯。次の結界を張るのには、しばし魔力の回復が必要だと魔導師たちに伝えた。
魔導師達は話し合ったのであろう。余が結界を張ったあと、私達がその結界が壊れないように維持しますと言ってきた。
(魔力が少ない余は、その提案に乗るしかない)
一度、王都に結界を張れば、余は不必要になるのでは? 番の所に戻りたいと牢屋版に伝えても、無理だと言われた。
余の幼き愛しい妻に会いたい。
来る日も、来る日も、あの時はそう願っていたな……いまは元の場所で愛する嫁と眠っている。
もう、余は寂しくない。
「……二時過ぎか。シャン、そろそろ時間だな」
「もう、そんな時間? ジン、行きましょう」
と、二人が竜の姿から人型となり、向かうのは北区にあるミリア亭。カランコロンとドアベルを鳴らして店を訪れる、二人のお目当てはなんと"リーヤの気まぐれ"だ。
「いらっしゃいませ、ジンさん、シャン」
「いらっしゃい」
「いつものを二つくれ」
「リーヤ、宜しくね」
「かしこまりました、いま準備するから待っていてね!」
奥のテーブルが二時過ぎになると、彼ら二人の、特等席となった。
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